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2021.11.01

【セミナーレポート】高知県オープンイノベーションプラットフォーム「プロジェクト共有会」(2021年9月22日)

2021年9月22日に高知県オープンイノベーションプラットフォームのプロジェクト共有会をオンラインで開催しました。
第1部では、IoT推進ラボ研究会員による複数の企業や団体が連携したプロジェクトの事例を紹介いただき、第2部では、「複数の企業や団体が連携して課題解決や事業開発を行う際のポイント」をテーマに、パネルディスカッションを行いました。

第1部:プロジェクト事例紹介

1「養豚場における豚の健康管理の効率化」

最初に登壇いただいたのは、株式会社STNet 研究開発部 主席研究員 野口英司様。

株式会社STNet、株式会社ソフトビレッジ、tonoi株式会社の3社が連携して行っている、「養豚場における豚の健康管理 システムの開発」について、プロジェクトの成り立ちや進め方の現状についてお話しいただきました。

~プロジェクトの概要~

高知県四万十町の養豚場で、豚の耳に電波等を発するタグをつけ、RFID技術と画像認識技術を使って豚舎内の豚の行動量を測定することにより、健康状態が悪化している豚を早期に発見する手法の実証実験を行っている。

~プロジェクトの始まり~

豚の健康管理については、養豚の知識が全くないところからスタートした。
プロジェクトの始まりは、2020年の秋に高知県オープンイノベーションプラットフォームの課題説明会に参加したこと。そこでtonoiの戀川さんに出会い、現場見学会でディスカッションをするうちに、おもしろいことができそうだという感覚を覚えた。

~知見を共有し合い、ゴールを探る~

2020年10月からネット上で勉強会や話し合いを行い、2021年の1月に豚の健康管理システムにチャレンジすることを決定。2月にICTコミュニティで面識があった片岡さんに声をかけてプロジェクトを組み、共同研究をスタートした。この時点で豚の体調不良を発見するようなソリューションがほとんどなかったことから、研究開発を行って新しいものを生み出すことをプロジェクトのゴールとした。

最初は子牛の健康管理を検討していたが、牛はすでに健康管理の技術が進んでいることがわかり、豚の方が研究開発に適していると判断し、豚にシフトした。豚は牛ほどコストをかけられないことから、より安く実現する方法を生み出すことができれば、他の家畜へ展開できる可能性もあるのではないかと考えた。

~豚の行動データを蓄積し、ビジネスへ~

2月~4月、課題提供者に協力いただいて豚舎に入り、豚の行動、ふるまいをどうやって拾っていくかを検討した。マーカー、RFIDなどの方式について、PoCシステムを作っては試していくうちにRFID等で動態検知ができそうだとわかってきた。
その後、5月~7月の実験によって手応えを感じ、現在は子豚から成豚に成長する数カ月間を追跡するしくみを作ろうと準備を進めている。

豚の行動状態について、行動が鈍っているのではと推定できるデータを長期間調べることで、豚の体調とデータとの関係性について次の実験で確認しようと考えている。

~共創から生まれるこれまでにない可能性~

高知県オープンイノベーションに参加することで、目標を共有する仲間がいれば、自分たちだけではできないと思っていたことでも手が届く可能性があるのだと強く感じている。多くの研究開発では「やってみたけどビジネスにならなかった」ということもあると思うが、課題に深く取り組むことで得られた知見や経験には、今後の活動に役立つヒントが詰まっている。地域に貢献するものを生み出そうとする努力があってこそ、想いを形にできるのだと思う。未来に向かって、みなさんと一緒にチャレンジしていきたい。

2 「産学連携事始め。最近の実例を通して」

次に登壇いただいたのは、高知工科大学 情報学群 教授 栗原 徹様

高知県内の企業(M社)とともに進めている技術開発プロジェクトについてご紹介いただきました。

~講演後の名刺交換をきっかけにスタート~

M社は太陽光発電向けの単結晶シリコン インゴットを製造するメーカーであり、製品が正しく製造されていることを確認する検査技術を模索していた。
2017年11月に行われた「高知県産学官民連携センター(ココプラ)」のイベントで、私が講演をした際にM社の担当者と名刺交換し、1週間後にメールが届いた。
“検査において技術的な課題が多く、既存の設備では限界を感じている。工場を見学していただいた上で設備や技術課題について議論し、共同研究ができないか”という相談だった。
1週間後に工場を見学、その場で技術課題をいくつか紹介いただき、我々が貢献できる余地について議論した。その1年後に共同研究契約締結に向けて動き出した。

~シリコンインゴット製造の精度を見極める~

製造工程は、砕いたシリコンを1500度に熱して溶かし、その中にシードを入れて少しずつ結晶を成長させて大きなインゴットを作っていく。製品として最も重要なのは原子がきれいに配列しているかどうかである。一つでも配列が乱れると単結晶格子を構成することができず、インゴットの表面は凹凸のないきれいな円柱となり、正しく配列するとひずみが生じて円柱に晶癖線が現れる。晶癖線はシリコンが単結晶格子を構成していることの証しであり、課題はこの晶癖線の発生を製造工程で監視する装置を開発することであった。

現場では、炉の側面にある見張り窓から、監視用のモニターカメラを通してわずか1~2ピクセルの粒が発生しているのを目視で監視していた。これを明確に視認できるようにしたいということで、我々は縦方向と横方向でぼかし方が異なる画像を用意し、その差を使ってDoG画像(差分画像)を作成した。中心付近に晶癖線があれば白く光る仕組みで、晶癖線を検出することに成功した。

役割分担としては、企業側で周辺機器の設置、パソコンと連携して動かすためのプログラミング、データ収集と晶癖線検出可否の評価を担っていただき、我々の方ではアルゴリズムを考案して実装し、実行環境を提供し、研究成果を学会発表した。実際に担当したのは学生で、3年間の研究で合計4回の学会発表を行った。

~未知を解明し広める大学としての役割~

大学の役割は、新しい技術や知見を広く世の中に知らせ、展開していくこと。論文を執筆して公表し、その論文を読めば誰もがその技術を使えるよう記録を残すのが重要な役割だ。
共同研究であっても、成果を世界と共有するのが大学の存在意義。会社の事業として重要な部分は秘匿しながら、論文として新規性が認められる部分は発表させていただく。それが共同研究契約の条件である。

~産学連携を進めるにあたって~

産学連携のポイントは、前のめりで積極的に行うことが大事。ただ、共同研究で期待する成果が出るかどうかはわからないし、学生が主たるメンバーとなるため、企業が求めるスピードで成果は出ない場合があるので理解をいただきたい。
また、直接製品開発につながらなくても、新しい知見や方法論、技術の流れを学ぶ場として、開発者の育成に活用していただきたい。

第2部:パネルディスカッション

第1部でご登壇いただいた野口様、栗原様と、高知県のICTコミュニティに精通する株式会社ソフトビレッジ 代表取締役の片岡幸人様をパネラーにお迎えして、「複数の企業や団体が連携して課題解決や事業開発を行う際のポイント」と題して、パネルディスカッションを行っていただきました。

(株式会社ソフトビレッジ 代表取締役 片岡幸人 様)

(司会進行役:株式会社アルファドライブ高知 代表取締役 宇都宮竜司氏)

「複数の企業や団体が連携して課題解決や事業開発を行う際のポイント」

~共同開発を始めるにあたって~

∸―― 一緒にプロジェクトを組むかもしれない相手と、どのようにして出会うのでしょうか。

【野口様】
自ら飛び込んでいくことが重要だと考えています 。例えば、高齢者の見守りのIoTを作ることを検討したときには、社会福祉のスクールに行って勉強し、先生にご意見をいただいたり、知らないことは知っている人を捕まえてきくことが大事だと思います。

【片岡様】
まずはIT系コミュニティを検索して、参加してほしいです。新しく来てくれる人はウェルカムです。コミュニティには新しいものを生み出す文化があります。

【栗原様】
セミナーの登壇がきっかけになることもあれば、本学の研究連携課に来ていただいてスタートする話題もあります。企業には事業の中で培った専門性があり、経験が蓄えられています。それは宝です。そのバックグランドを活用し、我々の技術をうまく使えば次のステップに進めると思います。怖がらずドアを叩いていただきたいと思います。

~プロジェクトの成功確率は1勝9敗だがそれでいい~

∸――民間企業からすれば、ビジネスの出口が見えていないことにリソースを貼ることになると思います。不確定要素が多い中、プロジェクトはどんな検討を経て意思決定されるのでしょうか。

【片岡様】
会社として、先の見えないことに大きな費用投下はできません。ですが、やれることはあります。相手を見つけて仲間を増やすことも大切ですし、IoTは単価の安いところからでもスタートできます。身の丈にあった投資しながら、ここぞというところに投資をする。 私の場合は1勝9敗ですが、それぐらいでいけばいいと思っています。

【野口様】
最近、研究開発を始めるときによく使う言葉に「手弁当」というものがあります。自分たちのリソース、強味を持ち寄って、お互いに何ができるかをディスカッションする。お互いのメリットが出せるのは難しいことですが、立ち位置やゴールなど状況をよく聞き、しっかりコミュニケーションを取りながら進めることで大切だと考えています。

~大学にとっての共同開発とは~

∸―― 大学では、共同研究をする・しないの評価軸はどこにあるのでしょうか。

【栗原様】
論文になるかどうかですね。研究としておもしろいか、新規性があるか、世の中で解かれていないことについて論文で示すのが大学の存在意義ですから。

∸――民間企業側からすれば、取り組んだ先に汎用性があり、ビジネスになった時に横展開できるようなものに取り組みたいのではないかと思います 。そういう点で考えた時、 ローカルな課題でもテーマになりうるのでしょうか。

【栗原様】
なり得ます。課題を深掘りすると新しい問題意識が出てくるので、そこに行き着けば論文として成立します。その視点が水平展開できれば実りのある話になると思います。

∸――大学と連携し、大学生が参加することの共同研究のメリットは?

【栗原様】

~共同開発に必要な要素とやるべきこと~

∸――役割分担・利益分配は、いつ・どのように決めればよいのでしょうか。

【片岡様】
権利関係は、参加するスタンスによって変わってきます。「このようなスタンスで参加するので、ここはそちらで、ここは私たちで」とはっきり伝えることが大事です。そうでないと、「お互いにやらない」状況になります。研究開発では特許を取るのかも重要な点です。

【野口様】
利益分配についてはビジネス化が見えてきたタイミングで、役割分担については最初の段階からお互いに確認しながら進めていくようにしています。そこがふんわりしていると揉めますので。ですが、最初からはっきりと線引きして指示するような進め方はできないため、情報交換をかなり密に行うようにしています。

【栗原様】
大学と企業は1対1の関係ですから、役割分担は話して行く中で自然に決まっていきます。これまでは、我々が新しい技術体系を作り、企業には情報や道具を提供してもらって、うまく棲み分けができています。

~成功に導くために~

∸――共同プロジェクトの成否を分けるポイントを教えてください

【栗原様】
ひらめくかどうか。突破口が見つからず一年間前に進めなかったこともあります。神様が舞い降りるまで頑張れるかどうかですね。

【片岡様】
組む相手が重要です。「この人とやってダメだったらしょうがない」という相手と組めば、結果が出ないということはありません。思いやミッションをしっかり共有することが大事です。

【野口様】
「何をもって成功とするか」ということを共有できることが協働においてはとても大切だと思っています。目指すところが違う人とはうまくいきません。ゴールをどこに置くかで評価は変わってきます。

∸――本日の総括と、視聴者へのメッセージをお願いします

【片岡様】
まずは一歩を踏み出すことが大事です。コミュニティに参加して感覚をつかみ、外の話を取り入れたり、技術的な課題をクリアしたりしてほしいですね。難しく考え過ぎず、一歩を踏み出してください。

【野口様】
やったことのないことでもやらないと新しい価値は生まれません。高知のみなさんとともに、地域の課題解決から未来を作ることを考えるチャレンジができればと思います。

【栗原様】
それをやり続けてきた人にとっては当たり前の問題でも、周辺の人にとってはまったく新しい問題で、チャレンジし甲斐があります。いろんなところで「こんな問題を抱えているんです」と話してもらえれば、課題解決につながると思います。

以上、2つのプロジェクトの実例紹介と約1時間のパネルディスカッション、その後質疑応答でも、共同研究の意義や参加の心構えについてのリアルな声をお聞きすることができ、有意義なウェビナーとなりました。

最後に

高知県オープンイノベーションプラットフォームで募集している課題に取り組まれる際には、課題提供者へのヒアリングや県内外の企業・団体様とのプロジェクト組成支援等のサポートをさせていただきます。
会員の皆さまが、新たな製品の開発を効果的に行えるように、今後もご支援を継続していきます。
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