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「養豚場における豚の健康管理の効率化」の課題について、実証実験を行いました!
令和3年5月18日、「養豚場における豚の健康管理の効率化」の課題について、四万十町で養豚業を営む平野協同畜産様にご協力いただき、実証実験を行いました。平野協同畜産様では、豚を群で管理しており、見回りの際には群の中で調子が悪そうな豚を目視で探し出しています。 しかし、この方法では豚の不調に気づくことができるのは見回りの時間に限られ、また属人的なスキルに頼るものになってしまいます。豚の不調を早期に、効率的に検知するためには、人手に頼らない新たな手法の確立が求められます。
令和3年5月18日、「養豚場における豚の健康管理の効率化」の課題について、四万十町で養豚業を営む平野協同畜産様にご協力いただき、実証実験を行いました。
平野協同畜産様では、豚を群で管理しており、見回りの際には群の中で調子が悪そうな豚を目視で探し出しています。
しかし、この方法では豚の不調に気づくことができるのは見回りの時間に限られ、また属人的なスキルに頼るものになってしまいます。
豚の不調を早期に、効率的に検知するためには、人手に頼らない新たな手法の確立が求められます。
■今回の実証実験について
今回の実証実験は、RFID技術と画像認識技術を使用したタグにより、豚舎の中の豚の動態を検知するものです。
実験に先立ち、令和3年2月には豚舎にカメラを設置して豚の行動パターンを分析しました。
中でも今回は、給餌器エリアで食事をしているという状態にフォーカスし、豚の健康状態を把握する方法を実験しました。
給餌機の近くに来る回数が少ない豚は健康状態になんらかの問題がある可能性が高いのではないか、と考えられるからです。
また、餌を食べているときはシルエットが分かりやすく、将来的には体重等の推定に応用できるのでは、という期待もあります。
■豚にタグを取り付け
まずは豚の耳にタグを取り付けます。タグにはそれぞれ固有のIDが振られており、センサーを通してIDを読み出すことができます。
■センサー等の機材を設置
次に給餌器の近くにセンサーを設置します。このセンサーが、餌を食べに来た豚のタグを検知し、センシング状況をクラウドに蓄積・分析します。センサーは設置が難しく、設置位置が悪いと正しくセンシングできないばかりでなく、豚に壊されてしまう可能性もあるため、大変苦労されていました。
天井部にはエッジボックス(大量のデータをAI処理できる小型装置)を設置し、上から豚の動態を監視することにより全体の様子を確認することができます。
■実験開始
最後にセンサーとエッジボックスが正常に作動しているか、確認しました。
給餌器に取り付けたセンサーで豚のタグを読み取っていること、エッジボックスでは全体の様子が確認できることが分かり、これで準備は完了です!
この後一週間ほどデータを取得し、豚の様子をチェックします。
豚の動態データを収集し、そこからどのような成果が得られるのか、そしてこのプロジェクトをどのように進めていくのかはこれから検討していくことになりますが、豚の健康管理の課題を解決する糸口になることが期待できます。
■今回のプロジェクトについてインタビュー
今回、実証実験を行った株式会社STNetの野口様、株式会社ソフトビレッジの片岡様、tonoi株式会社の戀川(こいかわ)様、また実証実験にご協力いただいた平野協同畜産の沖様に、プロジェクトに至るまでの経緯についてお話を伺いました。
左から株式会社STNet 野口様、株式会社ソフトビレッジ 片岡様、平野協同畜産 沖様
ーはじめに皆様が普段どんなお仕事をされているのかお聞かせいただけますでしょうか?
野口様:私は株式会社STNetで研究開発に従事しています。
四国電力グループである当社は、高知を含めた四国全域で光インターネットやデータセンター、クラウドといった情報通信インフラ事業を営んでいます。
私が所属している研究開発部では、AI・IoT・次世代通信などの最新ICT技術を調査・研究し、それらを活かして地域課題を解決するための実証実験などを行っています。
片岡様:私は現在、主に3つの仕事をしています。
一つは東京の会社である株式会社ダンクソフト高知サテライトオフィス、もう一人は佐川町のICTアドバイザー、そして今回この高知OIPの取り組みを行っている株式会社ソフトビレッジという会社を経営しています。
ソフトビレッジではIoTを主体に取り組み、農業の施設園芸の環境計測のサポート等を長く行ってきました。最近では、福祉分野で冷蔵庫の開閉による高齢者の見守りにも取り組み、佐川町などで実証実験を行いながら、実運用に向けた課題抽出と、その解決のための準備を進めています。
その他のIoT関連では、高知県の道路情報板の制御ソフトや通信機器の開発・保守を担当しています。通行止めなどの道路情報が表示されているLEDの電光表示板ですね。以前は手動で対応していましたが、災害時の危険性や高齢化などで人の対応が難しくなりました。そこで、遠隔から電光掲示板に通行止めなどを表示する道路情報板のシステムが開発・運用されていますが、現在はこれまでの電話線による通信制御から、SIMによる通信制御への変更を行っています。
戀川様:私はtonoi株式会社にて独自分散技術であるHybrid Computing(HC) の開発とそれを用いたIoT開発を担当しております。画像解析AIでビルやオフィスの監視などに使っていただいておりますが、分散技術による独自のプライバシー保護機能のニーズが高まりつつあります。HC技術はマイクロソフトパートナー認定を受けAzure Marketplaceに登録されております。
本プロジェクトでは、当初ミリ波レーダーを使ったAI解析の可能性を模索し自作した試作機にて実験を重ねましたが、現在はタグと分散AIによる画像解析を中心としております。クラウド費用の削減と高度なAI解析の両立が狙いです。
ーOIPや課題説明会に興味を持つようになったきっかけをお聞かせいただけますか?
野口様:次の新しいビジネスを産むのはAIやIoTだということで、STNetでは3年前に研究開発部ができました。
しかしAI、IoTについて、どのようにビジネスに活かしていけるのかを考える必要がある。そこで、まずは地域課題をAI・IoTを活かして解決するところから始めていくことになりました。
そんな中、高知県オープンイノベーションプラットフォーム (OIP) のお話を聞く機会があり、新しい何かを産み出そうとしていることを知り、異なる知見を持つ企業や人が1つの課題解決に一緒に取り組むことは価値がある、と考え、参加することにしました。
片岡様:元々、僕と野口さんはAWSのコミュニティJAWS-UGの活動を通しての知り合いで、もうかれこれ10年くらいの付き合いになります。野口さんとはコミュニティ活動などを通して信頼する友人であり、仕事でもご一緒できる良い機会でしたので参加しました。
野口様:片岡さんとはこれまで、コミュニティ活動でのつながりはあったのですが、仕事でご一緒するのは今回が初めてなんです。片岡さんと一緒に仕事ができることはとても楽しみです!
ーどのように今回のプロジェクトが出来上がったのでしょうか?
野口様:高知OIPの課題説明会に参加して、一緒に参加した企業の方々とどのようすれば課題が解決できるのか、という話で盛り上がったんです。その中の1人がtonoiの戀川さんで、このときが初対面でしたが一緒に課題に取り組もう、ということになりました。
その後、片岡さんにお声がけして、興味を持っていただけたのでプロジェクトとしてスタートすることができました。
ープロジェクトはどのような役割分担で進んでいますか?
野口様:技術的なところでは、tonoiさんが画像認識部分を、STNetとソフトビレッジさんはRFID部分を主に担当することで進めています。
プロジェクトは毎週web会議で、技術的なディスカッションと進捗確認を行うようにしていますので、お互いがどのような状況にあるのかわからないようなことはありません。
ー今後このプロジェクトで目指すところをお聞かせください。
野口様:今回の取り組みで得られた知見について業界誌等に出していくことを考えています。
今回のような豚の健康管理に関する実験は多くの実施事例があるのだと思いますが、あまり表に出てきていません。そこで情報を公開して興味を持っていただけたところと新しいビジネスを組み立てていく可能性はあるのでは、と思っています。
ー沖様からも、実証実験を通じて今後期待していること、理想としているところをお聞かせいただけますか?
沖様:今回の実証実験については業界誌に取り上げてもらい、協力企業から問い合わせがあることや業界の反応を期待しています。
豚の健康管理がテーマとなっていますが、何かしら問題がある豚をいち早く見つけるということを目指しています。
なぜなら重症化してからでは治すことも大変で、問題の発見が遅れてしまうと、見つけた時には病気が周りに広がっている可能性もあり、より大きな損害になってしまいます。そういった観点で病気の豚をいち早く見つけるというのは重要なことですし、また損害だけではなく周りに迷惑をかけてしまうような病気もあるので、豚の健康管理を行うことは私たちの責任だと思っています。
豚の健康状態は現場の者が毎日豚舎を回って観察していますが、なかなか全ての豚を見て判断するのは難しく、余程ぐったりしている状態でないと気づかない場合もあります。これはベテランでもなかなか難しく、朝一時間、夕方一時間と、時間も結構かかっている状況です。
いくら健康観察を頑張ってやったとしても、せいぜい8〜17時の勤務時間の間しか見られず、夜間の状態は分かりません。その時の情報をカメラやセンサーを使って、餌を食べたのか食べてないのかといった情報を記録しておけるのはすごく大事なことだと思います。
今回の解決策が機能するものになれば、非常に期待できる装置になるのではないでしょうか。また、鳥や他の動物にも応用できれば市場性も広がるのではないかと思います。
野口様:沖さんの要望が明確だったので、とても取り組みやすいです。「こういうことができたらいい」ということをスパッとおっしゃっていただけます。
ー最後に、これから課題に取り組もうと思っている方へのメッセージをお願いします!
片岡様:とにかくやれる事からすぐに取り組むことが重要だと考えます。環境が揃うまで待つのではなく、現状でやれることから始め、トライアンドエラーを重ねることが成果を得る早道ではないでしょうか。すぐに取り組みを始めるためにも、日頃から高知県OIPの課題説明や意見交換会などで協力関係を築かれることを勧めします。
野口様:高知から、みなさんと一緒に社会貢献するソリューションを実現できるよう、引き続きチャレンジし続けたいと思います。こうした機会を作っていただけた高知OIPには感謝です。こういった取り組みに興味を持っていただける方々がどんどん出てきてくれると嬉しいですね。
戀川様:高知OIPでは志を同じくするメンバーとの出会いがあり、積極的に実験にご協力いただけるお客様がいらっしゃいます。新規事業開発のまたとない機会であり、ぜひご一緒に高知県を盛り上げていきましょう。
■まとめ
今回の実証実験では、新規事業創出に向けた研究開発に取り組んでおられるSTNet様、ソフトビレッジ様、tonoi様、実証実験にご協力いただきました平野協同畜産様の間に、強い信頼関係を感じました。
課題解決型の新規事業創出という同じ目標に向かって進むことで、会社の枠を超えた絆が芽生えたのかもしれません。
高知県オープンイノベーションプラットフォームは、課題を解決しようとする企業同士の繋がりを生み、製品開発、新事業創出といった可能性を見出していける場としてご活用いただきたいと思っています。
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