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令和3年に開催した課題説明会のご報告
令和3年8月から12月までに開催しました課題説明会について、当日の様子を交えながらご報告いたします。 今回報告する4件の課題説明会は、コロナウイルス感染症対策もあり、全てオンライン開催としました。説明会は2部構成とし、第1部では課題説明と質疑応答を行い、第2部ではマッチング会と題して、課題提供者と解決側のラボ会員(IT企業等)がグループに分かれ、解決の方向性や必要な技術、連携の可能性などについて話し合いました。
令和3年8月から12月までに開催しました課題説明会について、当日の様子を交えながらご報告いたします。
今回報告する4件の課題説明会は、コロナウイルス感染症対策もあり、全てオンライン開催としました。説明会は2部構成とし、第1部では課題説明と質疑応答を行い、第2部ではマッチング会と題して、課題提供者と解決側のラボ会員(IT企業等)がグループに分かれ、解決の方向性や必要な技術、連携の可能性などについて話し合いました。
■課題説明会「水産仲卸業者における取引業務の効率化」(令和3年8月27日開催)
当日は、県内の水産仲卸業者である与力水産株式会社、九石大敷組合に課題提供者として参加いただき、課題について詳細な説明をいただきました。
水産仲卸業者は、市場に水揚げされた水産物を取引先のニーズに応じて仕入れ、仕分けし、梱包した後に出荷しています。この一連の取引業務に多くの人員が関わっており、また、取引データの処理のため情報の入力作業を複数回行わなければなりません。
具体的には、水産物の仕入れ後、客先ごとに魚種等の内容を紙にメモし、送付状を作成した後に納品書を別途作成、さらに同様の内容を管理ソフトに入力し、FAXで客先に送信。ホテルなど客先指定の請求書フォーマットがある場合は、請求用ソフトに入力するなど、一連の作業にかなりの手間を要するとのことです。また、水に触れる作業環境であるため、場合によっては防水対策などの検討も必要になってきます。
これらの現状を踏まえ、重複している作業を簡潔にし、かつ大量のデータに迅速に対応できる入力作業の一元化の仕組みが求められています。意見交換会では、入力内容(魚の種類は約600種、さらに大きさや調理方法も追加される)や、機器を導入した際にどれくらい海水の影響を考慮する必要があるかなど、現場の状況を確認しならアイデアや仮説に対する意見が飛び交っていました。
課題提供者の2社からは、巣ごもり需要により増えてきた小口注文や、ネット通販にも柔軟に対応し、販路を拡大していきたいという構想についてのお話もいただきました。
■課題説明会「中山間地域における水田の水管理の効率化」(令和3年10月21日)
課題の現場である本山町は、水田面積の9割以上を占める棚田を利用して米栽培を行っています。従来、棚田は平野部に比べて水管理に多くの労力を要しますが、本山町においても同様の状況で生産者の方が田頭として当番制で水門を調整しながら、適切な水量管理に努めています。生産者の減少や高齢化が進む中、従来の方法では田頭の負担が大きく、より効率的な方法が求められています。
棚田までの道路も車一台がぎりぎり通れる幅しかないため、各水門へは徒歩で回る必要があります。また、近年増えている局地的な大雨で水量が上がることもあり、田頭には大きな負担がかかっている状態です。水門の開け閉めのタイミングも田頭の感覚に頼っていますが、後継者も不足しており、今後も事業を存続させるには、天候や水路の水量を効率的に把握、または予測する方法を検討する必要に迫られています。
水田でスマート農業を展開しているラボ会員や、水量・水質のデータ管理をデジタル化して作業効率を上げる取り組みを進めているラボ会員にも参加いただき、実際の棚田までの道のりや、水門や水路の状況の動画を見ながら、課題解決を進めていく上で必要な通信環境などの導入状況や、現在の水門の管理で負担に感じていることなど率直な意見交換が行われました。
生産者の方からは、「棚田には誇りがあり今後も守っていきたいが、後継者には同じ苦労をさせたくない」という想いを語っていただき、参加いただいたラボ会員の皆様も「真剣に解決策を検討していく必要がある」という目線を揃えることができた貴重な時間になりました。
■課題説明会「地方観光地における交通渋滞の解消」(令和3年12月3日)
コロナ渦で国内旅行が着目されています。高知県には魅力的な観光地が多数存在し、県内外から多くの来場者を迎えています。
連休やイベント時などの繁忙期には、集中した来場者を既存の駐車場で受け入れきれず、長時間待たせる事態が発生しています。現状では、警備員による現場周辺での誘導、ホームページでの混雑情報発信などを行っていますが、より効果的な解決策が求められています。
県内外から多くの観光客が訪れている牧野植物園、のいち動物公園、にこ淵を管理しているいの町観光協会からそれぞれの課題とその背景をお話いただきました。
主な課題は、集中して来場する車両に対する駐車場不足による渋滞の発生、近隣住民からの苦情、オーバーツーリズムによる来場者の機会損失です。
共通しているのは道幅が狭く一度渋滞してしまうと引き返すことが困難であること、警備員を配置しているが繁忙期に差が生じるためコスト面で問題があること、代替案としてシャトルバスでの移動や臨時駐車場を設けるなどの施策は行っているものの、周知の問題もあり十分に機能していないことが挙げられます。
マッチング会では解決策として、来場者の特性や交通量をデータ化し適切なチャネルで発信すること、駐車場の状況を写真で警備員に通知し、効率的な誘導を行う仕組みの構築、またイベントそのものの見直しや来場やツアーの有料化など、デジタル技術以外の手法での対策についても話し合いました。
■課題説明会「淡水養殖場の状況把握・データ管理の効率化」(令和3年12月20日)
梼原町では、昭和初期より上質で豊富な水源を利用してアメゴ養殖が行われてきました。しかし、養殖事業者の高齢化により、事業を集落活動センターおちめんに継承することになりました。継承後も品質を落とさないためには、従来の経験と勘だけに頼らない養殖方法を検討する必要に迫られています。
アメゴは非常に繊細で、少しの水質低下や水温の上昇、餌の量の違いなどで成長が左右され、最悪の場合は稚魚から育てた魚が全滅する可能性もあります。そのため、孵化、稚魚、成魚などの生育段階によって3か所の養殖池を使い分けており、またその場所が離れているため、日々の餌やりや掃除、大雨や台風の際の見廻りの移動が負担となっています。
養殖場を対象にデジタル技術を活用した事業を展開されているラボ会員にも参加いただき、養殖池や周辺の環境の動画を見ながら、電源や通信環境などの現地の状況を課題提供者に確認し、解決策の方向性について検討いただきました。
以上の4テーマについては、現在、現場見学会の開催や課題提供者との個別の打ち合わせを行うなど、取り組みを進めているところです。
今後も課題説明会を開催してまいりますので、みなさまの参加をお待ちしています。
まとめ
令和3年の課題説明会には新たな会員の方々にも参加いただき、OIPに対する期待が高まっていると感じました。高知県内の課題解決をきっかけに、新しい製品やサービスを生み出していただけるよう、引き続き支援していきます。
解決策を検討されたいラボ会員に次のステップを用意しています
・協業パートナー探し
・課題当事者へのヒアリング
・解決策の実証サポート
・新規事業開発のハンズオン支援などをいたします。
今後の予定
今後開催する課題説明会の情報は、次のホームページのイベント情報ページにて順次公開予定です。