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高知県オープンイノベーションプラットフォーム「プロジェクト共有会」(令和4年1月27日)
令和4年1月27日に高知県オープンイノベーションプラットフォームのプロジェクト共有会をオンラインで開催しました。 第1部では、高知県IoT推進ラボ会員の2社から課題解決に向けたシステム開発と導入、実証実験を行ったプロジェクトの事例を紹介いただき、第2部では、「オープンイノベーションプラットフォームで見えてきた成果と課題」をテーマに、パネルディスカッションを行いました。
令和4年1月27日に高知県オープンイノベーションプラットフォームのプロジェクト共有会をオンラインで開催しました。
第1部では、高知県IoT推進ラボ会員の2社から課題解決に向けたシステム開発と導入、実証実験を行ったプロジェクトの事例を紹介いただき、第2部では、「オープンイノベーションプラットフォームで見えてきた成果と課題」をテーマに、パネルディスカッションを行いました。第1部:プロジェクト事例紹介
1 「直販所における店内売れ行き状況の可視化による販売促進」
最初に登壇いただいたのは、
四国情報管理センター株式会社 事業推進室 課長 依光 章 様
四国情報管理センター株式会社が行った「道の駅大月の直販所における店内売れ行き状況の可視化による販売促進」について、実証実験の過程で見えた成果や課題、今後の取り組みについてお話しいただきました。
~課題の概要~
高知県大月町の道の駅の直販所では、生産者によって午前中に出品された商品が夕方には品切れになり、販売の機会損失と品薄なイメージの定着による客離れが発生している。 また、出品時に商品を検品し、品名・数量を把握する仕組みがなく、直販所運営者はレジを通った時点で商品を把握しており、生産者に対しても消費者に対しても売場全体の売れ行き状況を可視化して伝えられない状況にある。
~現場を把握し、最適な方法を探る~
高知市内から2時間半ほどの距離にある、道の駅大月の課題の細部を把握することからプロジェクトは始まった。直販所で作業をしている職員の方へ現状のヒアリングを行い、その内容を元に、動画情報を蓄積するシステムを利用し、SNSと連携させて状況を可視化する方法を提案。職員の方に野菜や鮮魚など複数の商品棚の状態を撮影いただき、手動投稿する実証実験を昨年12月に開始した。
~自動配信の懸念点の払拭する取り組み~
その後、本年1月下旬に自動投稿の試作品を導入。直販所内にカメラを設置して自動投稿を行う際に、個人情報保護の観点から来店客の顔にぼかしを入れる対策や商品棚の状況が分かりやすいようにカメラの画角の調整も念入りに行わなければならなかった。今後も職員の方に協力をいただき、消費者や生産者の意見を取り入れながら試作品の改良に取り組んでいく予定である。
~新規事業開発から生まれる地域経済活性化の可能性~
今回の実証実験を通じて、蓄積された動画データや生産者・消費者それぞれの声を分析することで検証すべき項目が見えたことは大きな成果であった。手探りでスタートした新規事業開発であったが、高知県オープンイノベーションプラットフォームに参加し、高知県全体の活性化や地元の若者の雇用創出の礎を築くことにも取り組んでいきたいという新たな目標を持つことができた。
次に登壇いただいたのは、レイシスソフトウエアーサービス株式会社
ソリューション事業部 リーダー 崎山 貴充 様株式会社レイシスソフトウエアーサービスが行った「スポーツ興行のためのマーケティングデータ取得とデータを生かしたマネタイズ検討手段の提供」についての取り組みや高知県オープンイノベーションプラットフォームへ関わることで感じたビジネスに必要なスキルについてお話しいただきました。
~課題の概要~
高知ユナイテッドスポーツクラブは、Jリーグ加盟を目指しており、安定的なチーム運営のため競技力向上に加えて、チケット、スポンサー、グッズ販売の収益改善が急務だが、限られたスタッフ人員ではデータ取得、販売強化が難しい状態。最小限の人員で来場者情報を取得するとともに、取得した情報を元にマーケティング設計を実施できるようにしたい。
~LINEのシステムを開発して新規ファンの獲得を目指す~
プロジェクトを立ち上げるにあたり、高知ユナイテッドスポーツクラブと課題解決の方向性について話し合いを行った。試合に足を運んでもらうための施策として、すでに導入されていた公式LINEアカウントの友だち登録を増やして認知度を上げることから取り組むことになった。LINEにはシステムを埋め込める機能が備わっており、既存のファンが高知ユナイテッドスポーツクラブの公式LINEアカウントを自身の友人、知人にシェアし新規で2名が友だち登録をすると無料チケットを1枚プレゼントする仕組みを開発し、昨年末に実証実験を開始した。
~実証実験から見えた成果と課題~
2か月の実証実験を行った結果、従来の公式アカウント登録者数は600人程度であったが、最終的には900人前後まで増加した。新規のアカウント登録者数は予想以上に増えたが、コロナ禍の影響もあり、特典の無料チケットによる来場者は数名と伸びなかった。
LINEでのシステム開発と運用という、はじめての取り組みで一定の成果が出たことは大きな収穫であった。今後は特典内容を再検討し、来場者獲得に向けて取り組んでいきたい。
~課題解決の取り組みから考察する今後のエンジニア像~
昨今においては、ビジネスのDX(デジタルトランスフォーメンション)化へのシフトが重要視されているが、自分自身も先端IT従事者と先端IT非従事者の差別化の流れに対応していくことが必要だと考えている。高知県オープンイノベーションプラットフォームに参加することで、今後目指すべきエンジニア像がより明確になった。
第2部:パネルディスカッション
第1部でご登壇いただいた依光様、崎山様にパネラーとして参加いただき、高知県オープンイノベーションプラットフォーム事務局(アルファドライブ高知 宇都宮)の進行で「高知県オープンイノベーションプラットフォームで見えてきた成果と課題」と題して、視聴者の方の質問を交えながらパネルディスカッションを行いました。
~高知県オープンイノベーションプラットフォームに参加してみて~
【宇都宮】
高知県オープンイノベーションプラットフォームに参加するにあたり、社内での裁量(予算や人員確保など)はどの程度采配されていますか。また通常業務と比較してウェイトはどれくらいでしょうか。【依光様】
新規事業開発は手を付けられていなかった分野でしたが、事業推進室を発足させたこともあり、思いつき程度の提案でも相談ベースで裁量を一任いただけました。費用についても同様です。現在、高知県オープンイノベーションプラットフォームのプロジェクトの割合は全体の業務の5割程度です。【崎山様】
会社として世の中にないものにアンテナを張っていくという方針があり、新規事業開発に対してのベースはありました。課題案件の参加については会社の判断が必要ですが、予算やスケジュールに関しては一任いただいています。オープンイノベーションプラットフォームへの取り組みのウェイトは4割前後です。【宇都宮】今回高知県オープンイノベーションプラットフォームに参加してみた印象を率直に教えて下さい。
【依光様】
高知県オープンイノベーションプラットフォームについて、当初は全く知らない状況でしたが、課題解決から製品化に向けた一連の取り組みの中で、収益を上げて社会に貢献できるという実感を得ることができました。新領域への期待も感じています。若い社員から、「やりがいを見つけることができた」という意見があったことも今後につながる大きな成果です。【崎山様】
課題説明書の内容が充実しており、今まで取り組んだことのない分野でもゼロベースから把握することができたので、不安なく取り組むことができました。取り組み自体をビジネス化することについても、商品化までの流れやマネタイズについてアルファドライブ高知がサポートしてくれたことも心強かったです。【宇都宮】結果以外でご自身にとって得るものはありましたか。
【依光様】
人との出会いです。課題説明会やマッチング会に参加することで交換した名刺は100枚にのぼりました。特に高知県庁やアルファドライブ高知の皆さんとの人脈を築けたことは、自身にとっても会社にとっても財産になりました。また、20代の若手社員に経験を積ませて成長させることもできました。入社1~2年目の社員も課題説明会や現場見学会に積極的に参加することで、ビジネスに重要なコミュニケーションを学ぶ機会を与えることができたのは副産物の一つです。
【崎山様】
エンドユーザーとのつながりを持てたことです。元々別のシステム提供で高知ユナイテッドスポーツクラブとはかかわりがありましたが、今回の取り組みでさらに関係性が深くなりました。接点醸成の場としても高知県オープンイノベーションプラットフォームは機能していると思います。~課題提供者や関係者との関係性を構築することの重要性~
【宇都宮】実際に課題解決に取り組んでみて、課題提供者との関係性はいかがでしたか。どのようにコミュニケーションを図っていかれたのか参考になる事例があれば教えて下さい。
【依光様】
道の駅大月については、職員の方の意識が高く苦労することはありませんでした。皆さん前向きで直販所の課題についてのこだわりもありましたので、カメラの設置やアンケート収集など、協力いただいてスムーズに進めることができました。今はコロナ禍ということもあり、オンラインがメインとなりつつあるので難しい場面もあるのですが、やはり対面でのコミュニケーションは大事だなとは感じました。
【崎山様】
同様に現場の方とのコミュニケーションは大切だなと感じています。現場視察の際も、関係者らしき人がいたら必ず挨拶をする。そして、躊躇せず声をかけてみるなど、当たり前のビジネススキルが改めて重要であると実感しています。先方のアクションを待つのではなく自ら巻き込むことでスピード感を持って進めることができました。【宇都宮】逆に上手くいかなかった、躓いたポイントがあれば教えて下さい。
【依光様】
初めての経験でしたので、機器の選定に時間がかかったこと、ステークホルダー全員と最初に打ち合わせができなかったことです。生産者の方との話し合いがプロジェクトと並行してしまったことで、趣旨をご理解いただくのに時間がかかりました。【崎山様】
LINEを利用したシステム開発は初めてでしたが、ある程度の知見があり、見切り発車してしまったことで細かい部分で躓きました。また3週間で開発から導入まで完了させるスケジュールを組んでいたため、スピード感を重視し、システム開発の中でエラーになりそうな箇所の事前調査を開発と同時並行して進めました。結果的には納期までに開発できたのですが、やはり途中でエラーが発生してしまったので、事前の調査はしっかり行った方が良いと思いました。
~高知県オープンイノベーションプラットフォームへの想いや今後の展望~
【宇都宮】ご自身として高知県オープンイノベーションプラットフォームにかかわったことで得たことや今後への展望などはございますか。
【依光様】
今後も高知県オープンイノベーションプラットフォームに積極的にかかわり、自社の強みを活かしていきたいと考えています。さらには同業他社の皆様と手を組んで高知県全体の活性化を目指したいです。【崎山様】
高知県オープンイノベーションプラットフォームへの関わりで、ITベンダーの方と話す機会が増え、刺激を受けました。自分自身ももちろんですが、会社全体でデジタルビジネスの価値を高めていくことにチャレンジしていきたいです。【宇都宮】今回の取り組みから得た知見で社内にフィードバックしたいことはありますか。
【依光様】
自社で開発した医療系システムに展開したいと考えています。高知県の健康寿命を延ばすための管理システムになりますが、社内に閉じず、医療関係者、高知県の国保担当者の方などを巻き込んで発展させていきたいです。【崎山様】
非常に勉強になり、自身の成長を感じました。今までのエンジニアとしての考え方が変わる経験をしたので、自社でもアウトプットしていきたいと思います。【宇都宮】視聴者へのメッセージをお願いします
【依光様】
高知県オープンイノベーションプラットフォームは新規事業創出が目的ですが、自社だけでなく、高知県の中小の企業と手を組んでいきたいと考えています。新人育成でも大きな成果を得たので、今後は高知県の学生とも活動していきたいと構想しています。高知県の活性化や若い人達の雇用創出のために視聴者の皆様と一緒に取り組んでいきたいと思っています。【崎山様】
参加させてくれた会社や高知県、アルファドライブ高知の皆さんに感謝しています。課題が極端な例であっても、少しずつ勉強していけば必ず力になり、エンジニアとして、ビジネス人材として一生成長していける取り組みだと感じています。まずは興味のある案件があればチャレンジしてみて下さい。以上、2つのプロジェクトの実例紹介とパネルディスカッションを通じて、新規事業に実際に取り組んだ体験や取り組む意義やについてリアルな声をお聞きすることができました。
最後に
高知県オープンイノベーションプラットフォームで募集している課題に取り組まれる際には、課題提供者へのヒアリングや県内外の企業・団体様とのプロジェクト組成支援等のサポートをさせていただきます。会員の皆さまが、新たな製品の開発を効果的に行えるように、今後もご支援を継続していきます。
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