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「高知県OIPプロジェクト見学ツアー」活動レポート
令和5年2月17日に、「高知県OIPプロジェクト見学ツアー」を開催しました。
このツアーは、高知県のオープンイノベーションプラットフォーム(OIP)の取組で生まれた製品開発の現場を見学し、会員同士の交流を深めることにより、OIPの目的である「課題解決」と「製品開発」の機運を高めていくことを目的として開催しました。
当日は県内外より、20社、33名の高知県IoT推進ラボ会員の皆さまにご参加いただきました。
第1部は、高知県立牧野植物園と高知競馬場で取り組まれている3つのプロジェクトの見学を行うバスツアーです。以下の順に見学を行いました。
(1)Airitech株式会社による「地方観光地における交通渋滞の解消」課題の解決に向けた取組
(2)四国計測工業株式会社による「観光施設における水管理の効率化」課題の解決に向けた取組
(3)四国情報管理センター株式会社による「競馬場における放馬の早期検知」課題の解決に向けた取組当日のツアーガイドは、ラジオパーソナリティーもされている伊藤実沙子さんです。
4月から放送開始予定の、高知県出身・牧野富太郎博士がモデルとなっている連続テレビ小説『らんまん』で盛り上がっている高知の紹介や、高知県立牧野植物園についてご紹介していただきました。
牧野植物園に到着後、1件目のプロジェクトである「地方観光地における交通渋滞の解消」課題の解決に向けた取組を、Airitech株式会社 代表取締役 山﨑 政憲 様、テクニカルコンサルタント 川上 貴傅 様よりご紹介いただきました。
この取組は、東京都に本社を置くAiritech株式会社と、高知県の株式会社オサシ・テクノスとの共同で行われています。【課題の概要】
牧野植物園は、ゴールデンウィークなどの観光シーズンには県外から多くの観光客が訪れます。植物園は標高約250mの五台山の山中にあり、道中は一方通行の山道となっているため、駐車場が満車となる混雑時には、車が山の中で立ち往生してしまったり、せっかく来場した観光客がそのまま下山せざるを得ない、といった課題がありました。【取組の内容】
交通渋滞の緩和に向けて、リアルタイムに情報を収集し、混雑状況を可視化・分析を行う取組を行っています。植物園の駐車場に向かう進入路に、バッテリーとソーラーパネルを組み合わせたカメラを設置し、機械学習により車両台数をカウントすることで、駐車場の混雑状況を可視化しています。
現在は満車を検知してアラートを通知することを試験運用中ですが、将来的には、道路の電光掲示板と連携して混雑状況を表示させるなど、自動で運用できる形を目指しています。
また、蓄積されたデータを分析することにより、渋滞予測を立て、観光客向けに公式HPやSNSで発信をすることなどにより交通渋滞の緩和が実現できるのではと考えています。
次に、2件目のプロジェクトである「観光施設における水管理の効率化」課題の解決に向けた取組について、四国計測工業株式会社 事業開発課 羽野 智也 様よりご紹介いただきました。
この取組は、香川県に本社を置く四国計測工業株式会社と、高知県の株式会社ソフテックとの共同で行われています。【課題の概要】
牧野植物園は五台山の頂上付近に位置しており、利用する水は隣接する竹林寺などと共用の貯水槽などを使用して確保しています。
園内では、植物への灌水に加えて、来園者の利用するレストランやトイレなど、様々な場所で水を利用していますが、意図せず貯水槽の水を使い切ってしまうと、植物の生態に影響を与えたり、園内のレストランやトイレなどの使用に支障をきたす、また、竹林寺をはじめとする周辺施設に迷惑をかけてしまうなどのリスクがあります。
また、園内にも貯水槽が7箇所に分散して設置されていますが、貯水状況の確認・記録のためには広い園内を見回らないといけないため、水の利用状況がリアルタイムに把握できていない、という課題もありました。【取組の内容】
園内の貯水槽、水道メーターに無線通信センターを取り付け、IoTプラットフォーム(クラウド)を活用してデータを収集することで、遠隔でのリアルタイム監視を可能とする製品の開発に取り組んでいます。貯水槽に後付け可能な無線通信センサーを活用した水位計を設置しました。また、上水道の配管にはスマートメーターを設置し、PC、タブレット端末・スマホ等などのデバイスで遠隔で流量監視を行うことができます。
今後は、汎用的な製品とすることで初期コストを抑えつつ、機器や現地工事まで含めたオールインワンでユーザーに提供できるような製品とするよう、検討していくとのことでした。
牧野植物園から高知競馬場に移動し、3件目のプロジェクトである「競馬場における放馬の早期検知」課題の解決に向けた取組について、四国情報管理センター株式会社 代表取締役社長 中城 一様、システム部事業推進室課長 依光 章様、山田 康隆様よりご紹介いただきました。
競馬場の守衛室に設置されているモニターを見ながら、開発したソリューションを説明していただきました。
【課題の概要】
高知競馬場では、競走馬の放馬(馬が人間の手を離れて逃げ出すこと)によって交通事故等が起こるリスクがありました。そのため、放馬発生後に関係者に通報するシステムを導入したものの、関係者が放馬に気付くまでにタイムラグがありました。また、人がいない夜間はそもそも放馬に気付けないという課題もありました。
【開発した製品の内容】
AIによる既存の防犯用のカメラ映像を活用した放馬検知と、即時通達可能な携帯型IoTデバイスによる放馬通知を実現しました。
高知競馬場内には、多数の防犯用のネットワークカメラが設置されています。その映像をAIが解析し、「馬」が単独でいる状況を検知した場合「放馬の疑いあり」として警備員に通報します。
また、カメラが設置されていない場所等で人が放馬に気付いた際には、今回開発された携帯型のIoTデバイスのボタンを押すことにより、その場で関係者に通報を行うことができます。
このシステムにより、放馬が発生した際に、より早期に検知することで、安全かつ余裕をもった対応が可能になりました。
この「放馬の早期検知システム」は、令和2年度から取り組んできた高知県オープンイノベーションプラットフォーム事業として初めて完成した製品であり、そのお披露目の場ともなりました。参加したラボ会員からは、「各プロジェクトの課題特定からソリューションデザイン・実行に至るまでのフェーズを拝見させていただきとてもインスパイアされました」「技術的な内容や市場性についての情報が得られました」など、現場での見学と意見交換がとても有意義であったとの感想をいただきました。
第2部の懇親会では、参加者やプロジェクトメンバーらが交流を深めました。参加者からは、「地場企業の皆さまとざっくばらんにお話できた」「新たな出会いがあった」などの感想をいただき、より密な情報交換や親睦を深める場となりました。
今回のプロジェクト見学ツアーが、県内の課題解決と製品開発の加速化に向けた機運を高め、開発プロジェクトの組成に繋がっていくことを期待しています。
OIPではこれからも、課題説明会の開催などを通じて、デジタル技術による高知県内の課題解決と、それを起点とした製品開発に向けた取組を進めていきます。 高知県IoT推進ラボ会員の皆さまのご参加をお待ちしています。